太宰治の〈女語り〉による女性表象と「饗応夫人」

 

 「饗応夫人」(昭和二三年一月)は太宰文学における〈女語り〉の系譜の最後に位置づけられる小説である。語り手「ウメちゃん」の視点から、彼女が仕える家の「奥さま」の自己犠牲とも言える饗応について語っていく物語になっている。戦後小説における「饗応夫人」の特異な点として、〈女語り〉による女性表象を行うという点が挙げられる。そこには、〈衰退する母〉と〈現実生活者としての女性〉のモチーフが変奏されているものの、女性による女性表象での独自的な展開もなされていることに問題意識を持った。ここでは〈女語り〉の系譜を振り返ると同時に、〈衰退する母〉と〈現実生活者としての女性〉という戦後太宰の女性表象の典型とそこからの逸脱を「饗応夫人」のなかに検討する。

 

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卒論(仮)―「人間失格」との問題

 こんにちは~。すっかりご無沙汰です…。一応、この間からの続きで記事を書きます。

卒論(仮)① - 谷

卒論(仮)ー「美男子と煙草」② - 谷

なんか前回「冬の花火」で書きますと宣言した気がするのですが、話の繋がり上「人間失格」について書きます。というのも、人間失格」と前回までで話した「美男子と煙草」は相似点をいくつか挙げられるのではないかと思っているからです。

太宰治 人間失格

 

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卒論(仮)ー「美男子と煙草」②

 卒論中間発表が終わりました! 犠牲者云々のテーマはもっと詰めなければいけないなあというのが今のところの課題です。

 前回(卒論(仮)① - 谷)の続きとして「美男子と煙草」について検討を続けていきます。

www.aozora.gr.jp

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絲山秋子「沖で待つ」(と芥川賞)

 

絲山秋子:1966年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後住宅設備機器メーカーに入社、2001年まで営業職として勤務。03年「イッツ・オンリー・トーク」で第96回文學界新人賞を受賞。04年『袋小路の男』で第30回川端康成文学賞、05年『海の仙人』で第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年「沖で待つ」で第134回芥川賞を受賞。他の著書に『ニート』、『北緯14度』、『不愉快な本の続編』『忘れられたワルツ』などがある。[1]

※最新作『御社のチャラ男』は2020年1月に単行本化

 

沖で待つ」:初出は2005年9月号の「文學界」。2006年に文芸春秋社から単行本化、2009年に文春文庫から文庫化される(見比べたところ、それぞれの版で校異などありませんでした)。

 

◆選評(『文藝春秋』平成18年/2006年3月号368-373選評掲載より抜粋)

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卒論(仮)①

 こんばんは~。卒論を書きます! まあ一人でやっててもつまらないし、妄想になるし、あなたの感想ですよね?という羽目に陥るし云々…なので、気軽に書いて気軽に読んでくれれば嬉しいです。何か言ってくれたらもっと最高です!

 題材は太宰の「美男子と煙草」です。⇒太宰治 美男子と煙草 

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